研究会の誕生

振り返って思うに、そもそも事がスムースに運んでいれば、この有機の里創り研究会は生まれていなかったでしょう。その意味で、事がスムースに運ばなくてもあきらめず、模索し続けた結果、この会が生まれるべくして生まれたことに感謝したいと思います。そしてその過程で会員の結びつきも、以前より一層緊密になりました。

事の発端は、坂東市が平成二十一年六月広報誌で市民に呼びかけた「五つのプロジェクト」への参加から始まります。この呼びかけは、住民参加の町づくりを象徴していると高く評価し、私達の会では、プロジェクトの一つ、「農業創造プロジェクト」に四名が参加しました。もう一つ評価できたのは、市の職員も自主的に手を挙げて参加する仕組みだったことです。月に二回、午後七時半ごろから十時近くまで、みな仕事を終えた後の時間帯の話し合いが、半年間続きました。みな自主参加だけあって、出席率もよく熱心で、職員も資料やこちらの提出物の準備など誠実に対応してくれました。半年後、沢山の提案の中から選ばれた案が全体会で発表され、その中に私達の会が提案した以下の二案がありました。

  • 国が推奨しているバイオマスタウン構想に坂東市もトライする
  • 市にある県立農業高校、農業大学校のどちらかに有機農業科を設ける

他の四つのプロジェクトから出された提案は、市議会で大なり小なり予算化され、実現しました。私達のプロジェクトの提案に関しては、お金の問題以前に提案の全てが基礎的な仕組みの改革そのものにつながっているため、まだ実行されていません。ただ、私達の会は、この「農業創造プロジェクト」に参加したお蔭で、今後の農業の在り方を考えるきっかけを与えられました。そして、廃棄物化してしまっている未利用でもったいない資源「バイオマス(生物体量)」をうまく循環させることができる「バイオマスタウン」を国が勧めていることも知りました。しかし、これまでに三百以上の自治体が「バイオマスタウン構想」を提案し国で受理したが、現実の成功例は少ないと聞きました。化学肥料の多用による土壌の無機化、農薬による耐性菌の増加、両者の地下水への浸透、連作障害などの問題に加えて、今回の東日本大震災による放射能汚染が、農業の未来を更に暗くしました。私達の会は、この厳しい現実を見据え、身を引き締めて、次世代のために新たな時代を創っていこうという決意で、この坂東市を「微生物循環によるバイオマスタウン」にしようと、部会「有機の里創り研究会」を発足させました。

3・11の以前から、EM技術の開発者である比嘉照夫教授から、チェルノブイリの原発事故の際の実験/検証で、EMの中の主役である光合成細菌が放射能を低減させる力があると聞いていました。そこで、光合成細菌を始めとするバランスのとれた微生物の組み合わせにより、持続的で豊かな土壌が約束されれば、それに勝る次世代への贈り物はないと考えています。この「有機の里創り研究会」は、光合成細菌の培養に取り組みながら、市の測定器で二回、光合成細菌やEM菌が放射能を低減させる力がある事を検証、確認しました。

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菅谷で同じ堆肥床から採取した堆肥1kgのもの4袋を使った放射能減少実験結果

堆肥のみの測定結果

  • 平成24年2月13日,同じ条件下の堆肥を市の測定器で放射能を測定してもらいました。堆肥は4袋それぞれ1kgを用意し,測定には1袋あたりおよそ半分の量を用いました。その測定結果は同じ堆肥でも異なった数値がでました。

4種類の液体添加後の測定結果

  • 同じ場所で採取された堆肥なのに数値にばらつきがみられましたが,そこに各々異なった液体500mlを添加してからよく撹拌後密閉し,各々離しておきました。そして,10日間後に再度測定してもらいました。

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「猿島野の大地を考える会」の基本理念に基づき、「バイオマスタウン構想」と並行して「微生物循環によるバイオマスタウン」の実現に向け、行政と連携し、実験、検証を踏まえながら、一歩一歩着実に進めていこうと定例会で話し合いました。そこから、放射能の低減だけでなく、その他にも人類にとって多いに助かる特徴を有している光合成細菌を安価に普及する事が会の使命と、益々培養に熱が入りました。

 

「バイオマス」とは?

バイオマスとは、生ゴミ、畜産の廃棄物、もみ殻、落ち葉、木材チップ、し尿、下水汚泥などの有機物の総称であり、生物体量という意味で大別すると、動物、植物、微生物ということになります。現在、それらは各々の地域で燃されたり、廃棄されたり、活用されないままになっているもったいない資源です。特に生ごみは、現在多額の焼却費を払って燃され、環境汚染や温暖化につながり、悪循環を引き起こしています。

「バイオマスタウン構想」とは?

国では、数年前から「バイオマス日本」というキャッチフレーズで、一府六省横断的に、各々の地域がバイオマスを堆肥化したり、熱、電気、液肥がとれるバイオガス化したりすることで資源循環することを、公表の義務と半分の助成金をつけて奨励しています。それを「バイオマスタウン構想」といいます。このバイオマスタウン構想を、坂東市から発信してもらいたくて、その後何度も要望書を提出したり、千名以上の署名を集め、会員数名で市長室へ持参したりしました。

要望書を何度も提出した結果、ついに平成25年4月25日に、バイオマス活用推進計画の作成に踏み切る旨の返事を頂きました。しかし、具体的な進展はまだ見られていません。会は、これからも諦めず、機会あることに市に働きかけていく所存です。

そして、前はバイオマスタウン構想と言われていましたが、2012年に国は「バイオマス活用推進基本法」を作り、バイオマス活用推進計画と名称を改め、2020年までに全ての都道府県と600の自治体に、バイオマス活用推進計画申請を目標化しました。